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種 別 提言活動
タイトル 「現下の政治情勢に対する緊急提言」
発表日 2007/11/06
発表元 新しい日本をつくる国民会議(21世紀臨調)
内 容 平成19年11月6日


新しい日本をつくる国民会議(21世紀臨調)
現下の政治情勢に対する緊急提言
 


本年7月の参議院選挙で自民党は大敗し、衆議院では連立与党側が三分の二以上の議
席を掌握する一方で、参議院では野党側が過半数の議席を掌握し、議長や議院運営委員長ポストを野党側が独占するという、かつて経験したことのない事態が生まれている。

福田内閣はこうした国会情勢を踏まえ、野党側との対話・協調路線をいち早く表明し、野党側に極力低姿勢で協力を呼びかける政権運営をとり続けている。さながら、福田内閣は、衆参の「ねじれ」を国難と位置づけ、対決の回避を最優先する緊急避難型の政権運営に徹しているようにも見える。

われわれが何よりも懸念するのは、無原則な「無責任政治」の台頭である。「法案が何も通らない国会」「動きのとれない国会」というイメージばかりが流布、喧伝され、それを方便として、あたかも「動かない国会」が肯定されるかのような言動が飛び交い、国会外における国民不在の密室の政党間のやりとりでしか展望が開けないかのような言動が横行している。

しかしそれは、決別を決意したはずの55年体制型の政治スタイルの復活であり、これまでの政治改革の積み重ねを台無しにし、国民意思から切り離された「無原則な政治」「無責任の政治」に再び道を開きかねない。しかも、一部では、中選挙区制への復帰が真剣に議論されていると言われている。われわれは、こうした政党、政治家の迷走ぶりに強い危機感を抱いている。

二院制問題を根本から解決するためには、憲法の見直しを必要とする。しかし、いま問われているのは、それ以前の問題であり、政権や政党にその意思があれば動かすことのできる課題ばかりである。

試されているのは、日本の政党、政治家の統治能力である。「新しい国会情勢を踏
まえた新しい政治慣行の創造」と「規律ある政党政治の実現」を両立させ、次の総選挙を「政権選択選挙」とする道筋を確かなものとすることである。

われわれは、以上の認識にもとづき、次の提言を緊急に行なうものである。


提  言



第1.政権による正当な権力行使の必要性

1. 選挙で示された国民意思を踏まえ、「新しい国会情勢を踏まえた新しい政治慣行の創造」と「規律ある政党政治の実現」を両立させつつ、「動かない政治」を動かす第一義的な責任は政権与党の側にある。この意思を持たない政権であれば、その地位と責任を事実上放棄していると言わざるを得ない。

2. ことに、今国会では会期末を目前にしながら法案は一本も成立していない。来年の通常国会でも予算案・予算関連法案の成立を危ぶむ声が早くも聞かれている。しかし、こうした事態に危機感を持つのであれば、従来の政治慣行にとらわれず、国会の会期を大幅に延長し、通常国会の召集日を早め、あるいは定例日等を見直して審議時間の十分な確保に努めるなど万全の態勢を固め、政権の意思を国民に明確に示す構えが先ずあってしかるべきである。

3. また、なによりも政権与党は、憲法に定められた衆議院の優越を最大限活用する覚悟を決めるべきである。とくに、参議院が否決した法律案を衆議院が3分の2以上の多数で再議決しうる権限を封印する必要はどこにもない。日常的に衆参の意思が分かれた場合は、普通のこととして使うべきである。

4. 政権与党がその権限の行使を自ら封印している理由として、参議院側がこれに対抗して福田内閣問責決議を可決し、首相以下が参議院に登院できなくなり、あるいは審議が空転し、政権が窮地に立たされるという観測が流布されている。しかし、憲法は第67条で内閣総理大臣の指名に関する衆議院の議決の優越を、第69条で内閣の不信任の決議案を可決するのは衆議院と定めており、参議院の問責決議に憲法上の根拠はない。

また、憲法は第63条で、「内閣総理大臣その他の国務大臣は、両議院の一に議席を有する有しないとにかかわらず、何時でも議案について発言するため議院に出席することができる」と定めている。憲法に優越する国内法、政治慣行は存在せず、憲法に根拠のない問責決議で憲法上の権利を封じることはできない。政権与党はその権限の行使に躊躇する必要はない。政権与党による適宜適切な権力の行使は規律ある政党政治をつくる契機になる。それを回避し続けるかぎり、新しい政治慣行を創造する術はない。




第2.新しい状況に対応した国会ルールの創造

  
1. 先週、福田首相と小沢民主党代表は2度にわたり唐突な党首会談を行った。しかし、いかなる理由があるにせよ、国会外での非公式な党首会談をすべてに優先させ、予定されていた国民注視の国会の場での「党首討論」を中止したことは論外と言わざるをえない。本来、国会の「党首討論」は毎週定例的に行なわれるべきものであり、その慣行の早急な確立に政党は取り組むべきである。

  (国会を動かす手順) 
2. いま、求められているのは、衆参両院の新しい状況に対応した新しいルールや政治慣行の創造である。現在の国会情勢をこれまで実現できなかった積年の国会改革に取り組む好機ととらえるべきであり、国会審議や運営の根本的な見直しに取り掛かるべきである。

政党、政治家が衆参の「ねじれ」で政治が停滞すると主張し、国会外のさまざまな政党間協議の可能性を模索するのは、与野党で対立する法案を合意に導く道筋が見えないからである。ことに政権側からすれば、参議院の野党支配が少なくとも6年続くことを考えれば、たとえ総選挙を行なっても事態を打開することができないという悩みがある。

しかし、「国会は動かない」と決め付け、国会外での解決に望みをつなぐことは与党事前審査過程を与野党間に無原則に広げるようなものであり、政策決定の実質を国会外の非公式の場に移行させ、国会の空洞化に拍車をかけるだけである。

政党間の政策協議のすべてを否定するものではないが、与野党は「委員会における法案修正」ができなければ→「両院協議会」で合意を得られなければ→「衆議院の3分の2以上の多数による再議決」という手順を踏み、「国会を動かす」ことで合意を形成する新しい仕組みを模索することにこそ努力を傾注すべきである。

(委員会審議の改革)
3. 例えば、現在の国会は、議案の提出がなければ委員会は開かれず、その審議も議案について疑義を質す「質疑」中心で、「討論」と称されるものも採決を前にした会派としての意見を表明するための形式的なものに過ぎない。

こうした硬直化した制度を見直すところから着手し、法案提出以前でも委員会を召集して政府における法案準備状況の報告を受け、与野党間で当該問題に関し自由に議論を行なうことのできる仕組みを整えることや、委員会審査における質疑終了後



一定数以上の委員の要求があるときは、委員同士が自由に議論を闘わすことのできる仕組みを検討する必要がある。

また、与野党が対立し合意形成が必要な議案については、政府案と野党案の「並行審査」を導入するとともに、「法案の修正」や「合意案作り」をより柔軟かつ自由にできる仕組みを整える必要がある。衆参両院の議院規則に定められている「小委員会」方式(衆規43条・48条、参規35条関係)を積極活用し、小委員会の場で政府案の修正または合意案作りが行なわれる手続きを進化させることも一案である。かりに現在の「小委員会」が使い勝手が悪いのであれば所要の改正を行い、「使える仕組み」に作り直すべきである。

(党議拘束の見直し)
4. 以上のように、与野党間の合意形成が国会内のルールに従って行なわれる政治慣行を定着させるためには、政党の党議拘束のあり方を抜本的に見直す必要がある。政党はそのための議論を直ちに始めるべきである。

日本の政党の党議拘束がその他の議院内閣制諸国に類例のないきわめて特異なものであることは、21世紀臨調をはじめ各方面からすでに指摘され続けている。日本の政党の党議拘束の特色は厳格に制度化された事前審査と表裏一体の関係にあり、野党においてもその事情は同様である。

「小委員会」など国会審議のなかで与野党間の合意形成を活性化させるためには、党議拘束の対象となるものの範囲を選別するとともに、党議拘束を必要とする場合であっても、当該法案を国会に提出する前段階での「事前」の拘束についてはこれを自粛し、所属議員による国会での活発な討論や活動を保障する必要がある。

そして党議拘束は委員会審査を踏まえた本会議における最終表決にあたって投票態度の統一をはかるためのものへと純化し、本会議直前に行なわれるものとする新しい政治慣行を確立する必要がある。また党議拘束を行う場合でも、衆参両院をまたいで一律に行なうのではなく、衆参別々に行なわれるルールも検討する必要がある。

  (議長主宰の新しい議事運営システム) 
5. なお、国会法では、議事整理をはじめ国会運営の基本的事項の決定は議長権限とされているものの、実際には、一般の常任委員会と同列の議院運営委員会に委ねられている。しかし、議院運営委員会は常任委員会のひとつであるだけに一般の委員会と同じ議事手続きが適用され、各会派の折衝には不向きであるため、事実上の協議が理事懇や院外機関である国会対策委員会に担われる事態を招いている。




そもそも、議院内閣制諸国で院の運営を常任委員会でとりおこなう国はない。常任委員会であれば、運営責任は委員長となり、各会派の中立的な裁定者がいない。そこでこの際、議長が国会法に定められた本来の職責を果せるよう、議長が直接的に
議院運営委員会を主宰する新しい議事運営システムを確立し、日常的に議長が与野党会派の言い分を聞いて裁定をくだす仕組みを検討することも一案である。

その際、議長主宰の新しい議院運営委員会には内閣の代表者の出席を認めるとともに、内閣に対し提出した法案の審議スケジュールに関する協議関与権を認めるべきである。

(両院協議会の見直しと活用)
6. また、衆参の議決が異なる場合に設置できるとされている両院協議会は、両院とも院の議決(院議)に賛成した側の会派からすべての委員が選ばれるため、合意案づくりは困難と言われ、しばしば衆参の「ねじれ」の深刻さの証として指摘される。

しかし、両院協議会が使えない制度であるとすれば、所要の改善を行ない、それを使える制度に磨き上げるのが政治の責任である。協議会の委員が「院議」を構成した会派からすべて選ばれているのも、国会法等の定めではなく単なる先例にすぎない(衆議院委員会先例295)。にもかかわらず、参議院選挙後そのような検討が試みられていないのは、政治の怠慢という他はない。

諸外国では工夫を凝らした様々な両院協議会のかたちがある。委員の選任方法や、三分の二以上の多数による再議決と両院協議会の関係を含め、合意案作りに向けて制度を実効あるものとするために、与野党は直ちに協議を始めるべきである。
  

第3.すべては総選挙にむけて

1. 政治改革によって小選挙区制が導入されてから多くの歳月が過ぎた。政治が混乱し、あるいは膠着状態に陥り、収拾つかない場合には、政党間で談合せず、国民の側にボールを戻し、国民の判断に委ねる慣行を政党は身につける必要がある。

政権掌握をめざした与野党間の健全な競争を否定し、政党間の無原則な妥協と談合を繰り返すところからは、「政治の不毛」しか生まれない。現在の与野党間の対立や「ねじれ」は、最終的には、国民に政権の選択を迫る総選挙を繰り返すなかで決着
をつけるべきであり、与野党は次の総選挙に向けてそれぞれの「政権公約」を磐石のものにし、国民に政権の選択を問うにふさわしい万全の準備を整えることこそ急ぐべきである。



2. 翻って、一部で報道されている中選挙区制の復活などは論外であり、国民を軽視した政党、政治家のご都合主義以外の何ものでもない。

小選挙区制は長年の政治改革のなかで、政治資金制度改革や政党助成制度と一体のものとして導入された。そして、副大臣・政務官や国会の党首討論も、首相を中心とする内閣主導体制(政治主導体制)の確立も、政権交代可能な政党政治の実現も、近年の政権公約(マニフェスト)の導入も、そのすべてが民意を直接的な「政権選択権の行使」という形で集約する「小選挙区制原理」にもとづいて組み立てられて、長年の政治改革の努力のなかで営々と築きあげられてきたものあることを、政党、政治家は忘れてはならない。

中選挙区制復活論議は、こうした政治改革の努力を台無しにし、ルールを歪め、国民の選択を限りなく「あいまい」にする無原則な「制度いじり」である。


3. 先の総選挙後、小泉内閣、安倍内閣、福田内閣と総選挙における国民の選択とは関わりなく首相の交代が繰り返され、連立与党内で政権の移譲が続いている。長年の政治改革の結果、「首相候補」「政権公約」(マニフェスト)「政権枠組み」を一体で選ぶ「政権選択の時代」を迎えた今日、福田内閣は国民からその正当性を疑われても仕方のない立場にあり、できるかぎり早い時期に解散総選挙を行ない、明確な政権構想を掲げて、国民の信を改めて問わねばならない責任がある。

4. これから先のすべての営みは、「新しい国会情勢を踏まえた新しい政治慣行の創造」と「規律ある政党政治の実現」を両立させ、次の総選挙を「政権選択選挙」とする道筋を確かなものとするために行なわれるべきである。現在の二院制度が抱える諸問題の根本改革も、次の総選挙において国民に問うなかでその解決策が検討されるべきである。
添付ファイル 11.06提言要旨.pdf
11.06提言文.pdf

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